研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第24回ブリーフィング

2010年6月30日に第24回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

小林 智 研究員
『明治20年代の判決文に見る「第三者」への対処』

[2010年6月30日第24回ブリーフィング報告要旨]

<小林 発表レジュメ>
 いわゆる旧登記法(明治20年施行)第6条は、登記に関する対抗要件主義を規定していた。当時、その文言上、登記なしには物権変動を対抗しえない第三者の範囲につき、その者が契約当事者間の物権変動について知っているか否かを問わずその範囲内に含まれるとする見解と、それについて知っている者をそこから排除する見解とが対立していたとされる。そのような対立状況は、当時出版された当該法律に関する解説書、『法学協会雑誌』第37号第38号誌上で行われた討論や、いわゆる旧民法の解説書などに確認できる。
 こうして、学説上、不動産物権変動をめぐる第三者の主観的態様が議論の対象となるなかで、当時の裁判において、その認定はいかになされていたのか、また、そこから導き出される結論にはこうした対立状況の反映が見られるのか、が問題となる。
 ところで、上記『法協』誌上の討論において善意悪意不問の立場を採った榊原幾久若、旧民法の解説書『民法正義』において悪意者排除の立場を採った井上正一は、判事として活躍した人物である。彼らが各々、合議体の一員として関わった、ここにいう第三者が関係する事案の判決文をいくつか参照すると、次のことが読み取れる。裁判所は、一見、契約当事者と第三者との対抗問題を構成しそうな事案において、訴訟当事者が第三者の善意悪意を争う構えを見せている場合にも、ただちにそうした主観的態様を真正面から取り扱うことはせず、いわばそれ以前に検討すべき、契約自体の成否といった客観的要素の吟味に基づき対抗的構成を否定するといった手法を用いて、結論を導き出すよう努めている。
 したがって、実際、第三者の主観的態様が認定の対象となり、それをめぐる学説上の対立が司法的判断に直接的に反映する場面は限られるように思われる。ここには、第三者に関わる学理の習得が実際の司法的判断およびその正当化に対していかなる意義を有するかを検討する余地がある。

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