研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第27回ブリーフィング

2010年11月16日に第27回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

杉山 奈生子 研究員
『18世紀フランス美術における人体表現について』           

[2010年11月16日第27回ブリーフィング報告要旨]

<杉山 発表レジュメ>
 本報告は、18世紀フランス美術の人体表現について、言説と表象を通して、その一様相を浮き彫りにすることを目的とする。
 18世紀フランス美術に関わる言説は、アルベルティの『絵画論』(1435年)に始まるルネサンスの理論体系の枠組みを踏襲しつつも、新たな展開を見る。とりわけ、人体表現に関しては、ディドロがファルコネによる≪自らの彫像の足下にひざまずくピュグマリオン≫に対するサロン評(1763年)で述べている通り、表象された裸婦の肉の柔らかさが、生命賦与の証として提示されるようになる。これは、アルベルティやダ・ヴィンチの幾何学的傾向の強い絵画論よりも、それ以降のヴェネツィアの美術理論書、ロドヴィーコ・ドルチェ著『アレティーノまたは絵画問答』 (1557年)に源泉を辿ることができる。ドルチェは、模倣すべき人体が生きているかのように表現されるための不可欠な要素として、色彩と柔らかさを挙げている。これは、ロジェ・ド・ピールが説いた美術理論にも継承され、彼は、18世紀の美学に先駆けて、受容者である美術愛好家の側に立った絵画論を意識し、眼を悦ばせる、感性を重視した絵画を推奨した。ルーベンスによる「古代彫刻模倣論」(1708年刊行のド・ピール『絵画原理講義』所収)やファルコネによる「彫刻(美術)」(1765年、ディドロ/ダランベール編『百科全書』掲載)では、絵画と彫刻の人体表現において、モデルとする人間を生きているかのように模倣するミメーシスの理論を基盤としながら、具体的には、裸体の繊細さ、柔和さ、そして、冷たい石や骨ではなく、柔らかい肉の表現を重要視している。これは、アントワーヌ・ヴァトーの雅宴画の彫刻モティーフや、ヴァトーが実見した庭園彫刻の模写などで生きているかのような表現が試みられるなど、表象世界で実践されている。しかし、表象作品の解釈については、理論の実践という一方向的な解釈に陥ることなく、多様な視点を持ち合わせることが肝要である。例えば、コンテクストとしての美術受容のあり方から美術批評や美術理論と表象の問題を捉え、18世紀ならではの裸体表現が生成されることも申し添えたい。

 

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