研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第28回ブリーフィング

2010年12月14日に第28回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

金 銀珠 研究員
『近代日本の文法学における助動詞の成立』     

[2010年12月14日第28回ブリーフィング報告要旨]

<金 発表レジュメ>
 本発表では,助動詞という品詞が近代日本の文法学においていかにして成立したのかを明らかにした。日本語の助動詞は、その規定が言語学のそれと異なり,今日言語学と日本語学の解釈上の混乱を招いている。この混乱の原因には近代日本の文法学者が西洋言語学の「語」という文法単位をどのようにして取り入れるかについて,助動詞が最も苦闘していた語群であったという理由があった。本発表では,江戸時代の以来の伝統的分類から近代日本の文法学成立期に至るまで,助動詞という品詞がどのように成立したのかを,その歴史的成立根拠にさかのぼって,解明した。
 「語」という文法単位は江戸時代以来の日本語の伝統的な分類では存在していなかった。伝統的語分類は,今日の言語学概念で言う「形態素」の分類に近かった。これは,日本語の動詞が接辞を利用して脱着可能なオプション式の語形変化をするからであった。一方,ラテン文法以来の西洋言語学では品詞分類を基盤にした「語」概念が存在し,「形態素」概念が出現するのは近代に至ってからであった。これは,ラテン語動詞の語形変化が一つの要素に様々な文法的意味が融合しており,語形変化のうちのどの部分がどの意味を表しているのか分割することが出来ないことからすると,自然な結果だったと言える。伝統的国学から近代言語学に移行するに当たって,日本の学者は,まず西洋の品詞分類をよく学んだ。近代日本の文法学者が西洋の品詞分類を取り入れるにあたって直面したのは,伝統的な形態素的分類から語分類にいかにして移行するかという「形態素」対「語」の対立であった。これは,意味の共通性をより重くみるか,形態的な完結性をより重くみるかという意味で「意味」対「形」の対立として言い換えられる。「助動詞」は言語学の概念からすると,語を形成するために取る形態論的手法の一つで,語以下の単位の「接辞」になる。助動詞が1品詞として立てられ,今日に至る過程で,このような「意味」対「形」の対立がどのような学説的解釈を経ているのか,その様子を再現した。


 

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