研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第31回ブリーフィング

2011年4月13日に第31回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

小林 智 研究員
『東京大学法学部卒業生の判決文に見る事実認定』

[2011年4月13日第31回ブリーフィング報告要旨]

<小林 発表レジュメ>
 明治10年代、東京大学法学部では、英米法の教授が行われていたことが知られている。本発表では、同校卒業生が原告・被告双方の代理人として登場する判決文のうち、裁判官は近代的法学教育を経ていない者であるもの、裁判官も同校卒業生であるものを取りあげ、そこに表れる事実認定のあり方の相違について比較・検討した。
 ところで、民事裁判において事実認定は妥当な紛争解決にとって枢要な位置を占める。それは、当事者はたいてい法律の解釈如何ではなく主要事実の存否をめぐって争うものであり、その解決が求められること、また、当事者に対する説得という観点からも、結論と具体的事実との間に必然的な結びつきが求められること、これらのことから導かれうる。その点、ここで取りあげた旧世代の裁判官の関わった事案は、大審院が原審における事実認定の不適切性を理由のひとつとして破毀し、移送したものである。
 以上をふまえて判決文を分析すると、代言人が互いに、主要事実の存否の証明へ向けて、事案に関するストーリー、間接事実および証拠を組織・配置しているのに対し、旧世代の裁判官が、その議論の構造を十分に理解せず、示された事実や証拠を代言人の主張とは遊離した独自の観点に基づき再解釈・再構成することで、事実認定を行っている様子が覗える。一方、東京大学法学部出身の裁判官は、代言人の主張に即して、ありうべきストーリーと争いのない間接事実を見出し、それら相互の論理的首尾一貫性の有無を検討することで、主要事実の存否を認定していることがわかる。それは、現在の裁判官が自認する認定手法とも合致するものである。
 したがって、現在にも通じる近代的裁判の要請からすれば、後者のあり方のほうが優れていると考えられる。それに関するより周到な理論的裏づけを行うとともに、ここに見られる断絶が当時どの程度の一般性を有する現象であったか等について検討することが、今後の課題である。

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