研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第34回ブリーフィング

2011年10月19日に第34回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

金 銀珠 研究員
『「髪の長き女」「髪長き女」「女の髪長き」構造の特徴と役割分担
―平安時代の中古語を対象に―』

[2011年10月19日第34回ブリーフィング報告要旨]

<金 発表レジュメ>
 現代日本語で「髪の長い人」と表現される連体修飾構造は,平安時代の日本語では「髪の長き女」(ノ連体),「髪長き女」(無助詞),「女の髪長き」(準体)のような言い方で表現される可能性がある。現代語の「髪の長い人」のように助詞「の」が主語を表す表現は,これまでの研究では「髪が長い人」のように助詞「が」が主語を表す連体修飾表現とよく比較され,歴史的研究においても両者を比較した論文は数多く見られる。これは,歴史的にみれば,助詞「が」がその勢力を拡大し,「の」が担当していた領域を侵食してきているという言語事実からすれば,当然で必要不可欠なプロセスでもある。しかし,このような研究上の流れは歴史的な変化の勝者を知っている現代人の視点から得られたものである。視点を変えて,例えば,平安時代の日本語話者の意識の中で,「髪の長き人」が「髪が長き人」だけを意識して使用されていたのかと言えば,そこには大いに疑問が残る。それは,上記のように平安時代の人にとって「髪の長き女」は「髪が長き女」のような構造だけではなく「髪長き女」「女の髪長き」のような構造でも表すことが出来たからである。本発表では,このような従来の研究上の問題点を踏まえて,同時代の言語体系に注目し,上記の似通った三つの構造がどのような特徴を持ち,どのような役割分担が行われていたのかについて考察した。
 本発表で検討した三つの構造は,共に「意味的他動性制約」と「構造的他動性制約」の特徴があり,さらに,無助詞構造はこれに加えて「非対格性」という制約もあった。このような制約の上で,ノ連体構造は主名詞に形式名詞が来る場合を主に担当し,普通名詞が来る場合,場所を表す用例に用いられる傾向にあった。主名詞が普通名詞で人や物の属性や性質を表す場合は,準体構造が担当し,無助詞構造は形式名詞,普通名詞に関わりなく,多く用いられていた。但し,無助詞構造は最も制約が多い構造であった。

 

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