研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第11回ブリーフィング

2009年1月22日に第11回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

小澤 実 研究員
『日本におけるヴァイキング社会像の需要と解釈』

[2009年1月22日第11回ブリーフィング報告要旨]

<小澤発表レジュメ>
 本発表では、発表者の専門であるヴァイキング研究のあり方を解釈学的に脱構築するために、明治から現在に至るまで歴史書を瞥見し、 そこで描かれる日本におけるヴァイキング社会像の根拠について再検討した。
 ヴァイキングとは、通常、8世紀末から11世紀前半にかけて、西ヨーロッパ世界を席巻したスカンディナヴィア人と理解される。しかしながらこのヴァイキングが実際にどのような集団であったのか、学者によって必ずしも統一的な見解があるわけではない。その理由は、ヴァイキング像を生み出す学者の拠る学問伝統、イデオロギー、そして史料の性格がそれぞれ異なることにある。デンマーク・ノルウェー・スウェーデンというスカンディナヴィア三国は、しばしば 「スカンディナヴィア」とひとくくりにされるが、自然条件、社会条件、学問伝統、残存史料すべてが異なる。したがって、どの地域に軸をおくかによって、演繹されるヴァイキング社会像は大きく異なる。 私たちは、この点をまず理解しておかねばならない。
 日本におけるヴァイキング社会像(=北欧中世像)の基礎は、『近代文学』同人であった山室(1906-2000)と荒正人(1913-79)が築いたといえる。若いころマルクス主義に傾倒し、アイスランドの質朴さや農民性に注目した彼らは、サガのような中世アイスランド文学の紹介を通じて、日本に北欧中世像を導入した。その後、歴史学者のなかでも北欧に関心を持つものも現れるが、多くは、山室や荒とおなじく、ヴァイキングが実際に生きた時代からは隔たった中世アイスランドの史料に基づいてその社会像を練り上げた。しかしながらそうやって構築されたヴァイキング社会像は、同時代史料に依拠していないという致命的な欠点をもつ。発表者は、内外の同時代史料が比較的多いデンマークをフィールドとし、そこで得られた情報に基づき、ヴァイキング社会像の再構築を図ることの利を確認した。

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