研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第13回ブリーフィング

2009年6月4日に第13回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

杉山 奈生子 研究員
『彫刻表現に関わる言説                                                                          ~18世紀フランスの場合~』

[2009年6月4日第13回ブリーフィング報告要旨]

<杉山発表レジュメ>
本発表は、18世紀フランスの彫刻表現に関わる言説がどのように展開されてきたかを、美術理論や美術批評、美術作品を通して検証することを目的とする。 アントワーヌ・ヴァトー(1684-1721)の雅宴画には生きているかのような裸婦彫刻が描かれるが、これは、当時の美術理論家ロジェ・ド・ピールの『絵画原理講義』(1708年)に所収されたルーベンス著「古代彫刻模倣論」が反映されている。この17世紀バロックの大画家による理論は、古代美術を模範としたルネサンスの美術理論の系譜に位置づけられ、古代人の美しい肉体を表した古代彫刻を模倣することや、素材としての硬くて冷たい大理石ではなく、石によって表された肉(体)を表現することを重要視している。
また、エティエンヌ・ファルコネは、ディドロ/ダランベール編『百科全書』の中で「彫刻」の項目(1765年)を担当し、作品は人の心を動かすべきものであり、そのためには石やブロンズ、大理石を通して、生きているかのような活気と熱情に満ちた人体表現を目指すべきだと述べている。その着想の先例を、ド・ピール/ルーベンスの前掲書、さらには例えば、ルドヴィーコ・ドルチェの『アレティーノまたは絵画問答』(1557年)に見ることができる。ファルコネの理論は、自らの彫刻作品《自らの彫像の足下にひざまずくピュグマリオン》で実践され、ディドロの美術批評における判断基準(ガラテアの彫像の肉の柔らかさ)にも通じている。
よって、18世紀フランスでは、古代、ルネサンス、17世紀から継承した伝統的なミメーシス(模倣)の理論が美術作品の中で実践されていると言えるが、作品解釈はそこに留まらず、18世紀特有の文化的コンテクスト―美術愛好家の台頭による新しい美術受容、美術批評の誕生による作品制作への影響等―を視野に入れて成されるべきである。

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