研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第15回ブリーフィング

2009年9月24日に第15回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学高等総合研究館にて開かれた。

前澤 大樹 研究員
『不連続AP構文とtough構文』

[2009年9月24日第15回ブリーフィング報告要旨]

<前澤 発表レジュメ>
本発表では、前回扱った不連続AP構文の分析をより多くのクラスの形容詞へと拡張することを試みた。(1)に示すような、ここで不連続AP構文(discontinuous AP constructions, DAPC)と呼ぶ構文では、名詞を修飾する形容詞とそれに選択される前置詞句が主要部名詞の前後に分離して現れており、その派生が問題となる。理論的・経験的見地からは、DAPCが補部を伴う形容詞による後位修飾構文(2b)に平行的な基底構造を持つと考えられ、またその分布の観察に基づいて、(3)に示す主要部名詞の移動が適用されない場合に(2a)のDAPCが得られると結論できる。この分析の下では、DAPCが可能なのは主要部名詞が形容詞よりも低い位置に生成される場合のみということになるが、(1)のsimilar等の形容詞の項構造を検討すると、この結論は正しいように思われる。更に他の形容詞に目を向けると、tough構文に対応する(4)のようなDAPCが可能であることが注目される。tough構文に対しては2種類の主要な分析があり、主語の基底位置を(5a)のように埋め込み節内とすべきか、(5b)のように主節とすべきか議論されてきたが、上記からすると(5a)が正しいことが示唆される。tough構文に於いて再構築効果が観察されるという事実は、これを支持するように思われ、(4)に対して(6)の構造を与えることができる。一方で、主語が量化された場合は再構築が不可能だが、Sportiche (2006)等はこれを数量詞の特性と関連させ、再構築を行うためにはDが意味的に空である必要があると主張している。この見解が正しければ、tough構文のDAPCで限定詞として不定冠詞のみが許されるという制約は、(6)の構造の下で説明を与えられる。つまり、DAPCの主要部名詞は形容詞の補部内に留まり、再構築を受けたtough構文主語と等しい環境にあるため、同様に空のDとしか共起できないと考えられる。このように、tough形容詞という特徴的なクラスの事例を検討することで、以前の分析を発展させると同時に、tough構文の構造に対しても、異なる観点からの知見を得ることができた。
(1) a similar car to mine
(2) a. a sure candidate to win
     b. a candidate sure to win
(3) a [aP candidatei a [AP sure [TP ti to win]]]
(4) a difficult passage to play
(5) a. Johni is easy [CP ti C [TP PRO to please ti]]
     b. Johni is easy [CP Opi C [TP PRO to please ti]]
(6) a [aP a [AP difficult [CP passagei C [TP PRO to play ti]]

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