研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第17回ブリーフィング

2009年11月26日に第17回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

小林 智 研究員
『「出訴期限規則」の運用をめぐる一考察――理論と実務のあいだ』

[2009年11月26日第17回ブリーフィング報告要旨]

<小林 発表レジュメ>
 いわゆる明治民法施行以前、「出訴期限規則」(明治六年一一月五日太政官布告第三六二号)は、消滅時効に関する唯一の実定法規であった。それは特定の債権関係について短期(6ヶ月、1年、5年)の出訴期限を定めるものであり、その時効法としての運用は、正当に債務を弁済した債務者をその証拠が失われることによる証明困難から保護することにその制度趣旨を見る理論に基づいて行われていたとされる。
 その理論によれば、実務上、大審院判決にも見られるとおり、時効援用の条件として、援用者による債務弁済の申立とともに、期限経過以外にその事実を推定させる証拠がなく、またそれに対する反証がないことが要求されることになる。しかし、短期の期限設定の下でその要求を厳格にすれば、たとえば比較的に容易な反証の発見によって、規則適用が否定される余地が相当程度ありうるという事態を招くように思われる。これは、実務における実定法規の尊重という要請からすれば採用しがたい理論であろう。
 実際、この規則に関わる米村壮宣判事の判決文をいくつか参照すると、期限の経過を客観的な証拠によって認定することに重点がおかれ、債務弁済の申立が時効援用の条件とされてはいないことがわかる。また、商人同士の売掛代金債権にごく短期(6ヶ月)の期限が設定されていることについては、商取引関係の早期安定のため債権者に権利行使を促す趣旨であるとの解釈が提示されている。
 このような米村判事の判決文には、実定法規を尊重することはもちろん、単なる杓子定規の適用に終始せず、その合理的運用に相応しい理論的理解を獲得する実務家の姿が垣間見える。このような姿勢は彼が司法省法学校正則科第二期生であったことから来る帰結であるのか、すなわち、こうした資質の獲得が系統的な近代法学教育の成果であるのかどうかについては、当時の実務全体における運用実態の解明も含め、今後の検討を待たなければならない。

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