研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第20回ブリーフィング

2010年2月18日に第20回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

杉山 奈生子 研究員
『アントワーヌ・ヴァトーの雅宴画と会話文化                                                                   ~文化的コンテクストからの図像テクスト解釈~』

[2010年2月18日第20回ブリーフィング報告要旨]

<杉山 発表レジュメ>
フランスの画家アントワーヌ・ヴァトー(1684-1721)は、王立絵画彫刻アカデミー入会作品≪シテール島の巡礼≫によって、雅宴画家と称されている。雅な紳士淑女が庭園で舞踊や音楽を楽しみ、恋愛模様をくり広げる雅宴画は、神話や聖書等を題材とした物語画(歴史画)と異なり、文学的典拠に乏しい。さらに、ヴァトーに関する一次資料が比較的少なく、個別の作品記述は皆無に等しいことから、明確な主題解釈は困難な状況にある。そのため、作品自体の造形的な観察および作品を取り巻く文化的・社会的コンテクストからの図像解釈がより有効な手法となってくる。本報告では、かつて書評でも取り上げた、メアリー・ヴァイダル著『ヴァトーの描かれた会話』(Mary Vidal, Watteau's Painted Conversations: Art, Literature and Talk in Seventeenth-and Eighteenth-Century France, New Haven/London, 1992)を手がかりに、新たな解釈への展望を提示する。ヴァイダルは、当時新しいジャンルとして確立した会話文学を傍証として、ヴァトーの雅宴画の主題が会話(conversation)であると主張している。
ヴァイダルがヴァトーのあらゆるジャンルの作品に会話の概念を適用した点は拡大解釈であると批判すべきであるが、一部の雅宴画には適用可能であると考える。特に、「会話の秘訣は、些細なことを高貴なマナーで話すこと」と会話の作法書で語ったスキュデリ嬢の言葉は、伝統的な物語画のように高尚な主題ではなく、当世風の男女の愛の営みを優雅に表象したヴァトーの雅宴画のモードに通じており、会話文学やサロン文化という文化的コンテクストから雅宴画を解釈することへの妥当性を裏付けるものである。

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