研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第21回ブリーフィング

2010年3月18日に第21回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

金 銀珠 研究員
『近代日本の文法学成立におけるbe動詞解釈』

[2010年3月18日第21回ブリーフィング報告要旨]

<金 発表レジュメ>
  本発表では幕末,明治期を経て近代日本の文法学が成立するに至る過程で西洋語のbe動詞が日本の学者にどのように解釈され近代日本の文法学に組み込まれていったのかについて考察した。近代日本の文法学は,江戸時代の蘭学をはじめとすると近世洋学および伝統的な国学,さらには,近代西洋文法学を資源にして成立しているが,本発表が対象としたのは,江戸後期の蘭学から明治以降,近代日本文法学が成立してくる過渡期の様相に関して歴史的資料を駆使して,その学説史の動態を再現しようとした。
  幕末の蘭学と明治期の英学では,be動詞は例えばde lelie is witは「百合が白し」ではなく「百合が白くある」, He is goodは「彼がよくある」のように逐語訳された。逐語訳は漢文訓読の伝統および,ペリー来日の際の交渉で活躍した蘭通詞の重大な誤訳問題が発生し,幕府がこなれた意訳よりも逐語訳を尊重する態度をとったことにより権威づけられた。be動詞解釈は形容詞解釈と密接に関係していた。逐語訳のことも影響し幕末の蘭学,明治期の英学では西洋語の形容詞が述語になることができないという解釈が生まれた。この西洋語の形容詞解釈にはラテン語以来の形容詞が名詞に「付属」する品詞であるという西洋語の形容詞規定も影響していた。蘭学家系出身で近代日本の文法学成立の入り口に当たる大槻文彦は西洋語の形容詞述語文でbe動詞は文を結ぶために必要であると解釈した。これを受けて近代日本の文法学の頂点にたつ山田孝雄の文法論ではbe動詞は人間思想の統一点「統覚作用」を表すものとして理論化された。松下大三郎では西洋語の形容詞は述語になれないものだけを指すものとし「連体詞」という当たらしい品詞が設定された。
 be動詞は日本の文法「学」を作る過程において試行錯誤していく過程が端的に表れている形式である。本発表ではbe動詞が形容詞概念の成立と相まって,山田文法の「統覚作用」(陳述の力)概念を生み,現代の学校文法における連体詞という品詞の成立に一助していく過程を明らかにした。この過程には言語事実を忠実に反映したとは言えない誤解や極端な解釈が介在していた。

 

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