教育プログラム
テクスト布置解釈学
第3回「テクスト布置解釈学原論」授業
2007年10月17日に第3回「テクスト布置解釈学原論」の授業が行われました。
担当:名古屋大学大学院文学研究科 佐藤 彰一 教授(西洋史学)
※第2回はグローバルCOEガイダンスのためレジュメはありません。
<授業要約>
「封建制概念のテクスト論的脱構築のために」
「封建制」という用語が、歴史研究において最も重要な概念の一つであることは、誰も異論を唱えるものはいないであろう。もともとこの言葉は、西洋中世の「フューダリズム」を表現するために、中国古代の統治制度の類型を言い表す言葉から借用したものである。その制度的核芯にあるのは、主従関係形成の担保となった「封feudum」であり、封は家臣が主君への奉仕の対価として与えられる土地その他の利益を生み出す財貨のことである。封の授受の条件や、授受の法的効力などは時代により変遷があり、これら変化を含めた多様な要素の総体がいわば「封建制度」と称されるシステムである。
こうした説明から理解されるように、このシステムの核となっているのは「封」であり、この「封」概念は11世紀から13世紀にかけて北イタリアで編纂された『封建法書Libri Feudorum』において、初めて法概念として構築された。そして16世紀の一群の人文学者、法学者たちにより、この『封建法書』が再解釈され、現在我々が知るような形で確立した概念なのである。
やがてこの概念は啓蒙時代のヴォルテールの『習俗論』や、モンテスキューの『法の精神』などを通じて人口に膾炙し、1789年8月11日の有名な国民公会決議によって、歴史的な実体を具えた概念として定着した。カール・マルクスがこの概念を彼の歴史理論に巧みに取り込んで、世界史発展の基本法則を構築したことはよく知られている。それ以後、この概念が中世という時代を性格づける上で、なくてはならないものとなった。
だが翻って、『封建法書』以前に「封」の概念を用いた中世の人々が、果たして『封建法書』において13世紀の法学者たちが定義したような意味で「封」を理解したか否かは、実はそれほど自明とは言えないのである。
今回の講義は、封建制概念の生成に関する問題の所在と今後の研究の展望を示すに止め、『封建法書』の分析を手始めに、今後研究の進展に即して解明された問題を講ずる予定である。



