教育プログラム
テクスト布置解釈学
第12回「テクスト布置解釈学原論」授業
2007年12月19日に第12回「テクスト布置解釈学原論」の授業が行われました。
担当:名古屋大学大学院文学研究科 天野政千代 教授(英語学)
<授業要約>
発話の内容である命題(proposition)に対する話し手や書き手の心的態度を法性(modality)といい、直説法、仮定法、命令法のように法性を表すために特殊化された動詞の屈折語尾形態を法(mood)という。言語では法性は法によってのみ表されるのではなく、法助動詞、準法助動詞、法副詞、挿入節などいくつかの語彙的手段によっても表される。しかし、現代英語のwill, may, shall, must等の方助動詞は語彙的項目というよりは、法性を表すために特殊化された項目であり、機能的項目と一般に見なされている。法性を表現するために特殊化された屈折語尾形態や機能的項目の存在は早くから文法家の関心を集め、様々な研究がなされてきた。
絵画のような非言語テクストも描かれた対象に対する画家の心的態度を表すことは言うまでもなく、特に人物や生き物の目と法性との強い関係が体系・機能文法の研究者によって近年指摘されている。法性は目のみによって表されるのではなく、色彩、構図、被書体の大きさなどによっても表されるが、目は法性を表現するために特殊化された器官と言うことができるであろう。今回の授業では、北信濃の小布施市にある岩松院の本堂天井に葛飾北斎によって描かれた鳳凰図を取り上げ、この絵の法性について論じた。鳳凰が架空の生き物であるという事実が、法性を強める結果になっていることを見逃してはならないが、その八方睨みの目として知られる目と法性の強い関係は特に注目に値する。この目の異様な鋭さは法性そのものであり、見る者に特殊な印象を与えるため、すでに言語の法に対応するものと言うことができる。



