研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究会

研究合宿

2007年10月27、28日に第1回グローバルCOE研究合宿を湯元榊原館(三重県)にて開催した.
同合宿では,釘貫亨教授(名古屋大学)とProf.Shigeru Miyagawa(MIT)による研究発表が行われた.

10月27日 釘貫亨教授 『日本文法学における「文sentence」の規定の問題について』
10月28日 Prof. Shigeru Miyagawa "Unlocking Knowledge, Empowering Minds"

[釘貫亨教授 『日本文法学における「文sentence」の規定の問題について』]

 文法学は、19世紀に言語学が成立して以来、伝統的な各国語の規範文法から科学的な記述文法へと展開した。山田孝雄(1873~1958)は、日本文法学における記述文法の確立者として高い評価を受けている。所謂「山田文法」は、文法学の観察対象である「文sentence」の定義に特色を持っている。山田は、従前の文法理論における文の定義が「あるまとまった意味と思想の表明」という類の説明に終わっていることに疑問を呈する。山田は、如何なる条件が整えば「まとまった意味と思想の表明」に達することが出来るのかという、より根源的な問いを発した。これは従来の文法理論に存在しないラジカルな提起であった。山田によれば文は、主語と述語との完備という形式的な側面だけでなく単語群を意味ある情報にまとめ上げてゆく精神的心理的な作用が必要であると考えた。そのような作用概念を山田は、当時最新の心理学説であったヴントの理論によって「統覚作用apperception」と呼んだ。統覚は、所定の規則によって並んだ単語(群)にひとまとまりの情報にふさわしい意識の注点に生ずる一回限りの作用であって、これがあって始めて文が成立すると考えた。しかし、統覚の原語Apperceptionは、山田が参照した元良勇次郎・中島泰蔵訳『心理学概論』(冨山房、明治32年1899)では、「明覚」と訳されており、山田はこれに従わず、桑木厳翼『哲学概論』(東京専門学校出版部、明治33年1900)におけるカント哲学におけるApperceptionの訳語である「統覚」の語を採用している。この事実は、山田の概念の由来がヴントに方法論を提供したカント『純粋理性批判』にさかのぼることを示すものである。このことは従来の日本語学では未報告である。

 

[Prof. Shigeru Miyagawa "Unlocking Knowledge, Empowering Minds"]

  OpenCourseWare(以下、OCW)は現在Massachusetts Institute of Technology(以下、MIT)で実施されている2000科目の授業教材をWeb経由で無償で利用できる仕組みであり、MIT以外でも2007年現在で世界150大学が参加するグローバルな規模の教材公開のための枠組みになっている。本発表では、OCWの歴史をたどりつつその意義を確認し、OCWの活動を経て明らかになったimage readingの教育的な重要性を主張するものである。
 1990年代後半に始まったいわゆるドット・コム・ビジネスの流れを受けてアメリカの各大学ではe-learning教材の販売を開始していた。1999年にMITでも同様のビジネスの可能性を探る委員会が学内に設置され議論を重ねた結果、教材を販売するという教育倫理的な問題に加え、e-learning教材の販売がビジネスとして必ずしも成功していなかったという経営上の問題もあり、MITとしては全く新しいモデルを高等教育の分野に提示することを決定した。OCWの利用者は学生だけでなく教員や独学者などで毎月200万以上のアクセスを記録しているが、利用者を対象とした事後的なアンケート調査によると閲覧者の66%は学士以上の学位を有しており、現在公開されている教材の質の高さを伺うことができる。またMITでは高校生の大学進学の判断材料にも大きく貢献していることが分かっている。
 OCWが提供する教材の多くは画像などを豊富に使っているという特徴があるが、こうした画像を無償公開という枠組みで利用するためには著作権等の問題をクリアしなければならない。教材のデジタル化と著作権の確認は、OCW事業の1/3を占める重要な課題である。しかし画像を用いた教材を読み解くための方法論はまだ確立していないため、名古屋大学文学研究科グローバルCOEプログラムの独創的な研究とその成果に大いに期待しているところである。開発された方法論に基づいた教育が実施されることで、画像を前にして国家間の歴史認識の相違などに由来する不用意な衝突も避けることができるであろう。

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