研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第7回ブリーフィング

2008年7月2日に第7回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

杉山 奈生子 研究員
『ピュグマリオン効果
~生きているかのような彫像の歩み、18世紀フランスを中心に~』

[2008年7月2日第7回ブリーフィング報告要旨]

<杉山発表レジュメ>
 発表者は21世紀COEプログラムおよびグローバルCOEプログラムにおいて一貫して、18世紀フランスの画家アントワーヌ・ヴァトーの雅宴画に関する考察を行ってきた(Cf. SITES, 3-1,4-1; HERSETEC,1-1)。雅な紳士淑女が庭園に憩い恋愛に興ずる模様を描いたヴァトーの雅宴画には、生きているかのようなウェヌスやニンフの彫像が度々登場する。この生々しい裸婦彫刻の視覚的着想源として、描かれた彫像を生身の人間に変容させる「ピュグマリオン効果」を鑑賞者のために意図した古代彫刻版画集(Galleria Giustiniana, 1640, etc.)を、形態的な類似性(Jan de Bischop, Signorum veterum icones, no. 76, 1669)も含めて提示してきた。今回の報告では、この名称の由来となったピュグマリオン神話の表象そのものに注目する。ピュグマリオンが恋したウェヌスの彫像に生命が賦与されるという本主題の図像は、13世紀以前には存在せず、中世末期に、ヴァトーの雅宴画の文学的源泉でもある『薔薇物語』第二部結末部の余談として写本挿絵にようやく登場する。その後、主題としてほとんど取り上げられなかったルネサンス・17世紀を経て、ピュグマリオン・テーマは、ヴァトーの生きた18世紀に爆発的な人気を博し、絵画・彫刻・演劇・オペラ・バレエの各芸術分野で関連作品が制作された。例えば、ヴァトーと同じ1717年に王立絵画彫刻アカデミーへ入会作品として提出されたジャン・ラウーの絵画≪ピュグマリオン≫は、生命賦与を色彩の変化によって表現し、その後の図像に影響を与えた。また、1773年のサロンに出品されたファルコネによる彫刻は、ディドロのサロン評から熱狂的な支持を得たことが理解される。これらの現象を、ヴァトーの彫刻モティーフを解釈するひとつの重要なコンテクストとして位置づけ考察する。

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