研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

ここから本文です

研究活動

研究員ブリーフィング

第10回ブリーフィング

2008年10月23日に第10回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

小林 智 研究員
『司法の近代化と自律的法解釈の条件整備』

[2008年10月23日第10回ブリーフィング報告要旨]

<小林発表レジュメ>
 近代社会では、制度によって制度適合的主体が生み出され、その主体が当の制度を運用する、という循環の成立をもって、効率的な社会秩序運営が可能となった。これを法秩序について見れば、自律的に法解釈を遂行する主体の系統的な産出が要となる。そこでは、法解釈実践が広く行われることで権力作動の安定性が保証されるが、同時に、個々の法解釈間での齟齬・衝突が予期される。それを権威ある法解釈の提示というかたちで解決し、それによって権力作動の安定性に寄与すべき役割を担う裁判官に、制度適合的主体の範型を求めることができる。
 日本の近代的司法制度確立期においても、自律的法解釈主体の産出とその制度的条件の整備が行われた。大審院設置以降、司法権を担う独立した機構が制度的に用意される。これを運用する主体を養成すべく、官立学校が早くから設置されたが、その主体産出能力は弱く、依然、近代的法解釈技術を習得していない法曹が司法制度を担うこととなった。この過渡期的段階では、司法省・大審院により、法解釈について裁判干渉が行われた。
 以後、司法制度を担うべき人材が質的にも量的にも一定の水準を保って輩出されるためには、資格試験制度と公教育制度との結びつきが確立されることが必要であった。その動きに対応して、大規模な私立法律学校が出現するのである。その後、帝国大学を頂点とする教育課程の単線的階梯が整備され、資格試験制度がそれに接続されるなかで、私立法律学校も自律的法解釈主体を産出する装置として、いわば体制内に組み込まれた。
 裁判所構成法によって裁判官の職権の独立が確立すると、自律的法解釈主体による司法のための条件が整うことになった。同時期に起きるいわゆる老朽司法官淘汰問題は、法解釈技術を身につけた自律的法解釈主体とそれ以前の主体との世代交代を意味するものである。そこで裁判官に要求されたのは、自身の責任において法的判断を行う資質である。

このページのトップへ