研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第12回ブリーフィング

2009年2月19日に第12回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

永田 道弘 研究員
『Procédé et/ou processus
-レーモン・ルーセル『アフリカの印象』の生成をめぐって』

[2009年2月19日第12回ブリーフィング報告要旨]

<永田発表レジュメ>
 言語の形式的構造からルーセルを評価する従来の批評は、「手法(プロセデ)」を強調するあまり、ルーセルをルーセルたらしめている奇想がいかにして生まれたか十全に説明していない。「プロセデ」だけで物語の奇矯さの形成すべてを説明することが不可能である以上、物語内容のレベルで働く創作方法を作品の生成プロセスから見出す研究があってしかるべきである。
 今回のブリーフィングでは、『アフリカの印象』を同時代のアフリカを題材とした通俗小説のパロディと考え、生成批評の外的生成/内的生成の概念を用いながら、草稿の改訂過程での先行テクストに対する摸倣・変形操作のプロセスを検証した。特に黒人王の人物像に焦点をあて、パロディの対象として外部から取り込まれたアフリカの通俗的表象が、執筆を通じて作品の内在的論理によってどのような変容を蒙っていくのかを分析した。このような生成プロセスの分析を通じて明らかにされたものとは、「プロセデ」とは別種の創作方法-作品の外部から紋切型ないしは個人的嗜好に合致するイメージを取り込んで複数のエピソードをつくり、それらを言わばコラージュのように結びつける-であった。通俗的な黒人王の物語に、それと同時並行で書かれた別の物語(女装した白人歌手の幼年期の物語)から抽出した要素をはめ込むことで、二つの物語系列を融合しつつ、そのどちらにも属さない第三の系列の物語が作り出されたものである。
この新たな物語性の特権的象徴が「女装した黒人王」の形象である。黒人王以外にも、西洋人でもアフリカ人でもあるような、男でも女でもあるような、既成の価値体系によってはアイデンティファイすることが不可能な倒錯的人物が多く登場する。これらの人物の造形にあたって、ルーセルは、性差や人種といった、文化が割り当てた属性や役割を遊戯的に撹乱している。彼のこのような身振りは、結果的に、同時代の通俗小説に内在する西欧中心主義的イデオロギーに対する一種の批判にもなりえていると考えられよう。

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