研究活動|名古屋大学グローバルCOEプログラム|テクスト布置の解釈学的研究と教育

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研究活動

研究員ブリーフィング

第18回ブリーフィング

2009年12月16日に第18回グローバルCOE研究員ブリーフィングが
名古屋大学文学研究科グローバルCOEオフィス(名古屋国際センター)にて開かれた。

内田 智秀 研究員
『ベルギーは文学にいかなる影響をおよぼしたか                                                                                    ―国民と民族の狭間で―』

[2009年12月16日第18回ブリーフィング報告要旨]

<内田 発表レジュメ>
本ブリーフィングでは、創作活動が本格化する以前にメーテルランクが文学、絵画について記した『青いノート』(1888年~1889年)を、19世紀ベルギーの歴史コンテクストに照らして考察した。
ベルギーは1830年独立した国家である。さらに中世以降独立まで、列強の支配下に置かれても各都市が自治を行う閉鎖的集団だったため、共通の歴史がベルギー国民には欠如していた。そのコンテクストの中で文学は、国民性の統一という名目で新しい芸術を積極的に取り入れ国民文学の創造を目指し、それまでの閉鎖的な旧体制から中央集権体制へと若者を導き、国家と密接な関係を築いていく一方、統一された歴史観の欠如、あるいは言語問題のため、文学の題材をフランスにはないフランデレン的、ドイツ的、ゲルマン的という民族色の強いものを取り入れなければならなかった。事実メーテルランクに限らず、ローデンバック、ファン・レルベルグなどの作家がフランデレン地域をモチーフにした象徴主義作品を発表している。
このようなコンテクストの中でメーテルランクも国家で分けず、「ゲルマン的性質« Germanisme »」、「ラテン的性質« Latinisme »」と独自の民族的視点で、文学、絵画を考察している。彼はベルギーをフランデレン地域やドイツと同じゲルマン的性質を有する国家とし、ゲルマン民族特有の物質と交感できる点を強調し、ラテン的性質を有するフランスとの違いを示した。さらにメーテルランクはラファエル前派やホイットマンなどのイギリス、アメリカの芸術にもゲルマン的性質を含むとし、自然や魂との交感や女性の表現について独自の解釈を与えている。この民族的視点による芸術論は、ジャン=マリー・アンドリューが「『温室』の詩人は『ペレアスとメリザンド』の作家とは異なる人物だ」と語るように、以後のメーテルランクの文学、哲学の基調をなす。

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